数日前から小学校の授業の一貫でおたまじゃくしを飼うことになったちび。クワ吉が死んだばかりなので、飼う前にちびにちゃんと世話をするよう言い聞かせた。
おたまじゃくしが住みやすい環境を調べてつくること。
おたまじゃくしの好きな食べ物を調べること。
毎日様子を観察して水換えをすること。
調べる方法は図書室か理科の先生にきくこと。
本当は私も育て方を調べてあったのだが、親があれこれなんでも教えるより、自分で調べた方が身に付くんじゃないかと考えたのだ。
昨日は学校公開があったので朝から学校へ行った。普段読み聴かせや声かけをしている成果で、子供たちが元気に挨拶したり飛びついてくれる。
教室のロッカーの上にはカブトムシのさなぎがいて、子供が一生懸命説明をしてくれる。オレンジ色のさなぎはうよんうよんともんどりうっていた。写真でしか見たことがない私は、さなぎはじっと動かないものだと思っていたので驚き、感動した。ちびのおたまじゃくしの飼育瓶をのぞくと、生えて来た後ろ足がびよんと伸びきった瀕死のおたまじゃくしがいた。水が淀んでいる。別の子供が空き瓶を持って話しかけてきた。
「あのねえ、僕のおたまじゃくし死んじゃったよ」
「ちゃんとお世話した?」
「あんまりー。死んじゃったら花壇のとこにジャーってやったよ」
「ちゃんとごめんね、って埋めてあげなかったの?」
「うん。だってまだ池にいっぱいいるし、すぐ死んじゃうんだもん」
「おたまじゃくしってちゃんと世話すればちゃんとカエルになるんだよ」
「すぐ生き返ればいいのにねー」
先生に呼ばれたその子はたーっと走って席に着いてしまった。
帰りの会が終わって帰ろうとしたちびをつかまえて話しをした。
「おたまじゃくしの水はいつ換えた?」
「換えてないよ」
「換えなさい。えさは?」
「えー!?水換え今日じゃなくちゃだめ?えさは誰かがくれてたよ」
「今日水換えなくて、明日死んでたらどうするの?」
お友達に手伝ってもらって渋々水を換えるちび。瀕死のおたまじゃくしをおそるおそるのぞく。
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翌日。
「ただいまあ。あのね、おたまじゃくし死んじゃったの」
「死んじゃったんじゃなくて、世話をしなくて殺しちゃったんだよね?」
「でもお昨日水換えしたし、誰かがえさをいれてくれてたよ」
「水換えするのも面倒くさがったよね?結局えさは自分であげなかったし毎日みてあげなかったね」
「おととい瓶ゆすったら元気だったもん」
「えさも水も換えなくて元気なわけないよね?驚いて動いただけじゃない?で、図書室で調べたり理科の先生にきいたりもしなかったんだよね?」
「理科の先生なかなか見つからないんだもん」
「職員室で居場所きけばいいでしょう?図書室だって行かなかったんでしょ?」
「ねえ、もう遊びに行っていい?学校行っておたまじゃくしのお墓にごめんねしてくる」
「埋めた時にごめんねしたんでしょ?今更遊びに行ったついでに謝るフリされたって生き返らないよ。生き物はどんなに体が小さくても人間と同じなところがひとつあるって話したの覚えてる?命っていっこしかなくて、死んじゃったら生き返らないの。ちびと同じ子供が一人もいないように、おたまじゃくしのあの子もこの世でたった一匹だったの。いくら見た目がそっくりでたくさんいたとしても、あのおたまじゃくしと同じ子は一匹もいないの。植物だってそうだよ。途中で枯れたら種だって残せないんだよ。おたまじゃくしと同じようにごはん食べないでいてみる?」
「いやだ!!」
「おたまじゃくしもクワガタも植物もお腹へっても声だせないんだよ。人間が捕まえたらちゃんと世話してあげなくちゃ逃げたくても逃げられないんだよ。ポケモンゲームやたまごっちと違って機械で餌与えるのとわけ違うんだよ。で、クワ吉やおたまが死んでもあまり悲しくないでしょう?」
「そんなことないよー!悲しいよ!」
「本当に?お世話しなかったから愛着わかなかったでしょ?毎日みてやらなかったからどんな特徴があったか思い出せないでしょ?逆に命の大事さがわかってかわいいと思えば毎日みるようになるんだよ。母ちゃんもちびを産んで、命を預かって、かわいいと思ったから毎日お世話するようになったんだよ。毎日世話するから、様子がいつもと違えばすぐわかるから病院に連れてったりできたんだよ。しゃべれない赤ちゃんをごはんもあげず、お風呂も入れず、洗濯も掃除もしなかったら病気になって死んじゃうよね。今だって母ちゃんがちびの世話やめたらどうする?生きて行けそう?父ちゃんが仕事やめたら母ちゃんとちびはごはん食べれる?あたたかいお家にいられる?この前もその話しはしたよね」
「わかった。じゃあ、学校行ってくる」
学校で野球をして遊んで帰ってきたちび。
「おたまじゃくしに謝ったの?」
「!!しなかった・・・だって母ちゃん今更謝っても意味ないって言うから」
「言われたからしなかったの?本当にごめんね、って気持ちないの?で、こんなカンカン照りだったし花壇のミニトマトに水あげたの?」
「・・・ううん」
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命の大切さを教えるにはどうしたらいいんだろうか。本気で考えなきゃならない。